前回に引き続き、宅建業者が自ら売主となる場合の、8種制限について学習しましょう。
過去12年、毎年出題されている単元になります。
8種制限は難しいイメージがありますが、覚えることが膨大というわけではないですし、ポイントをおさえて学習すれば大丈夫です。
インプットをしてアウトプットする。間違えた問題は再度インプットする、、、を繰り返していきましょう。

ボリュームがありますので、2回に分けて投稿してます。
クーリング・オフ 民法と宅建業法
民法
民法では通常、債務不履行などの理由がなければ、契約の解除はできない。
申込みの撤回もできない。
宅建業法
宅建業法では業者が自ら売主となる場合において、「事務所等以外の場所」で行われた買受の申込みや売買契約は、原則として、買主は申込みの撤回または解除することができる。
クーリング・オフできない場所
クーリング・オフのできない場所は買主が落ち着いて、冷静な判断ができた場所。
→事務所等。
※事務所や案内所は、自ら売主の業者の事務所・案内所だけでなく、代理や媒介業者の事務所・案内所も含む。






申込みの場所と契約の場所が違う場合
買受けの申込みの場所と契約の場所が違う場合。
→申し込みをした場所が基準となる


クーリング・オフが適用されない場合
売主がすでに物件を引き渡し、かつ、買主が代金を全額支払った場合は、双方とも履行終了のため、契約の解除ができない。
宅建業者が書面でクーリング・オフ可能なことを告げた日から8日間経過。
・物件の引き渡しが基準
・双方が履行終了させる
・移転登記だけでは×
・代金の一部支払いだけでも×
・全額支払いが必要
クーリング・オフの方法
クーリング・オフの意思表示は書面によって行う。
買主が契約を解除する場合は「解除します」と書面を発したときに効果が生じる。(発信主義)
よって、業者に到達しなくても、書面を発したときに解除したことになる。


クーリング・オフされたら契約関係はなかったことになるので、原状回復義務が生じる。
例)受け取った手付金等は全額返金
損害賠償請求や違約金の請求もできない。
宅建業法が定めているクーリング・オフ制度の規定に反するような、申込者に不利な特約は無効。
有利な特約ならOK。
「クーリングオフ(できるのに)できない」「損害賠償請求する」「違約金が発生する」等、業者が告げた場合、不当な行為等として、状況に応じ、指示処分や業務停止処分の対象となる
契約内容不適合責任の特約の制限
民法
民法では、種類・品質に関して、契約の内容に適合していない場合は、買主は追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約の解除をすることができる。
買主がその不適合を知った時から1年以内に売主に通知しないと、原則として、その不適合を理由として責任追及することができない。


買主に不利な特約を結んでもよい。
「売主は担保責任を負わない」「引渡し後1年間のみ責任を負う」という特約でもOK。
宅建業法
宅建業法では業者自ら売主となる場合、民法で定める内容よりも買主に不利な特約は無効となる。
例)「売主は担保責任を負わない」「引渡し後1年間のみ責任を負う」という特約はダメ。
特約が無効になった場合、民法の規定が適用される。
→【買主がその不適合を知った時から1年以内に売主に通知(期間制限)】
◎期間制限の例外
物件を買主に引き渡しの時から2年以上の期間を定めた場合は有効となる。


割賦販売契約の解除等の制限
民法
民法では割賦販売で履行遅滞に陥ったとしても、相当の期間を定めて催告をし、その期間内に履行されなければ契約を解除することができる。
口頭で催告OK、特約も自由。


宅建業法
宅建業法では業者自ら売主となる場合、割賦販売の支払いが滞っても30日以上の相当の期間を定めて、その支払いを書面で催告した後でなければ契約を解除できない。
また、残代金の一括請求もできない。
これらの定めに反する特約は無効。


割賦販売等における所有権留保等の禁止
民法
民法では所有権留保(代金支払い完了までは、所有権は売主にある)や、譲渡担保(担保にするものの所有権を債権者(売主)に移し弁済が済めば回復する)はOK。
宅建業法
宅建業法では所有権留保等は原則禁止。
宅建業者が自ら売主となって割賦販売契約締結や提携ローン付き販売をした場合には、原則、目的物を買主に引き渡すまでに、登記等の売主の義務を履行しなければならない。
◎所有権留保の場合の例外
①代金の額の10分の3以下しかお金を受け取っていない場合。
②受領額が代金の10分の3を超えていても、買主が抵当権の設定や保証人を立てるなどの担保設定をせず、または設定する見込みがない場合。
同じく譲渡担保も原則禁止、例外は受領額が10分の3以下。


問題に挑戦!
宅地建物取引業者Aが、自ら売主となり、宅地建物取引業者でない買主との間で締結した宅地の売買契約について、買主が宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づき売買契約の解除(以下この問において「クーリング・オフ」という。)をする場合に関する次の記述は誤っている。どこが誤っているのかを見つけ、理由を述べよ。
1.買主Bは、喫茶店で買受けの申込みをした際に、Aからクーリング・オフについて書面で告げられ、その4日後にAの事務所で契約を締結した場合、契約締結日から起算して8日が経過するまでは契約の解除をすることができる。
2.買主Cは、クーリング・オフについて告げられた日から起算して8日を経過するまでの間は、代金の全部を支払った場合を除き、書面によりクーリング・オフによる契約の解除を行うことができることが記載されていなければならない。
3.買主Dは、月曜日にホテルのロビーにおいて買受けの申込みをし、その際にクーリング・オフについて書面で告げられ、契約を締結した。Dは、翌週の火曜日までであれば、契約の解除をすることができる。
4.買主Eは、建物の物件の説明をAの事務所で受け、翌日、出張先から電話で買受けを申し込んだ。後日、勤務先の近くの喫茶店で売買契約を締結した場合、Eは売買契約の解除はできない。
答えは全部バツです。詳しい解説は「あこ課長の宅建講座 8種制限②」を御覧ください。



YouTube:あこ課長の宅建講座も併せてご覧ください。
ブログと連動していますので、さらに理解力がUPしますよ。