前回に続き、三大書面の1つ、重要事項説明、35条書面について学習していきましょう。
この単元は、毎年2~3問出題されます。
たくさんのことを覚えなくてはいけない単元ですが、買主や借主の立場に立ってイメージし、基礎的な内容を理解すれば、丸暗記していなくても意外と問題は解けます。
また、売買・貸借と重なっている部分もありますので、量の割には暗記部分が少ないです。
インプット、アウトプット、そしてイメージ力を駆使して、勉強していきましょう。
35条書面の単元は2回に分けて投稿します。
区分所有建物とは
構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所・倉庫等の用途に供することができる数個の部分から構成されているような建物。
35条書面で言うところの、区分所有建物とは、簡単にいうと「分譲マンションの一室」です。
マンション一棟の売買は、前回の建物の売買に該当し、マンションの一室の売買は今回の区分所有建物の売買になります。
違いをイメージしておきましょう。
区分所有建物を売買、交換する場合
宅地建物の売買・交換と共通する事項
物件に関する事項
1 | 登記された内容 ・抵当権など登記された権利の種類、内容、登記名義人または登記簿の表題部に記録された所有者の氏名を説明 説明する時点で登記されている権利について説明するので、物件を引渡すまでに抵当権が抹消される予定で あってもその旨を説明する。 |
2 | 法令に基づく制限 ・都市計画法、建築基準法等における造成や建築等の制限など。具体的な制限の内容。 |
3 | 私道に関する負担に関する事項 ・将来の負担も含む私道負担の有無、私道面積、通行使用料等の負担額。 |
4 | 飲用水、電気、ガス等の供給施設、排水施設の整備状況 ・未整備であればその整備の見通しや、その整備にあたって負担金が課されるかなど負担に関する事項。 |
5 | 未完成物件の場合 工事完了時の形状、構造 ・宅地:造成工事完了前→完了時の形状、構造、宅地に接している道路の構造と幅員等。 ・建物:建築工事完了前→完了時の形状、構造、主要構造部、内装および外装の構造や仕上げ等。 |
6 | 土砂災害警戒区域内、造成宅地防災区域内、津波災害警戒区域内にある時はその旨 |
7 | 水防法の規定により市町村の長が提供する図面(水害ハザードマップ)に表示されているときは、 水害ハザードマップにおけるその宅地建物の所在地 |
8 | 住宅性能評価を受けた新築住宅の場合はその旨 |
9 | 石綿(アスベスト)の使用の有無の調査結果が記録されているときはその内容 (実施は義務ではない) |
10 | 昭和56年6月1日以降に新築工事に着手したものを除く建物が、指定確認検査機関等による一定の 耐震診断を受けたものであるときはその内容(実施は義務ではない) |
11 | 既存の建物であるときは、建物状況調査(インスペクション)等に関する事項 ・既存の建物であるときは、実施後1年を経過していない建物状況調査の実施の有無や、実施している 場合はその結果の概要。(実施は義務ではない) |
12 | 既存の建物であるときは、建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存状況 ・確認の申請書、確認済証、検査済証、建物状況調査の結果についての報告書、既存住宅にかかる 建設住宅性能評価書等の保存の状況 |
取引条件等に関する事項
13 | 代金、交換差金以外に授受される金銭の額、および目的 ・手付金等の額と目的 ※代金や交換差金は重要事項説明の対象外 |
14 | 契約の解除に関する事項 ・契約の解除が可能な場合、手続きや解除の効果について |
15 | 損害賠償額の予定または違約金に関する事項 ・損害賠償額の予定、違約罰としての違約金を定めるか否か |
16 | 手付金等の保全措置の概要 ・宅建業者が自ら売主の場合、お客さんから受け取ったお金を返せるようにするための 保全措置義務の概要 |
17 | 支払い金、預り金を受領する場合の保全措置の有無、概要 ・宅建業者が取引の相手方などから、支払い金、預り金を受領する場合、保全措置を講ずるか 否か。保全措置を講ずる場合はその概要。※50万円未満のものについては説明義務なし |
18 | ローンのあっせんの内容、およびローン不成立の場合の措置 ・住宅ローン等をあっせんする場合、融資額、金利、返済方法などのあっせんの内容や融資条件。 ローンが受けられなかった場合の措置。 |
19 | 契約内容不適合を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結、その他の措置の有無・概要 ・宅地建物が種類、品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任 の履行に関して、保証保険契約等を講ずるか否か。講ずる場合におけるその措置の概要。 |
20 | 割賦販売の場合 現金販売価格、割賦販売価格、頭金・賦払いの額、支払い時期・方法 ・分割払いを条件として販売する。その場合は、割賦および現金の場合の、それぞれの販売価格や 頭金、賦払金の額や支払い方法等を説明。 |
追加記載事項(区分所有建物のみ)
1 | 敷地に関する権利の種類及び内容 ・敷地利用権であれば、所有権か借地権かなど。 敷地の面積、または借地権の場合であれば存続期間や地代。 |
2 | 共用部分に関する規約の定めがあるときはその内容 ※規約が案の段階でも、その案についても説明が必要。 |
3 | 専有部分の用途、その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときはその内容 ・専有部分の使い方に関する制限。 ペット飼育や店舗営業などについて規約の定めがあるなら説明をする。 ※規約が案の段階でも、その案についても説明が必要。 ◎区分所有建物の貸借と共通◎ |
4 | 専用使用権に関する規約の定めがあるときはその内容 ・専用駐車場や専用庭など。 ただし、使用者の氏名や住所は説明不要。 ※規約が案の段階でも、その案についても説明が必要。 |
5 | 一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用、通常の管理費用、その他の当該建物の所有者が負担しなければならない費用を、特定の者にのみ減免する旨の規約の定めがあるときはその内容 ※規約が案の段階でも、その案についても説明が必要。 |
6 | 計画修繕積立金の規約の定めがあるときは、その内容及びすでに積み立てられている額 ・滞納がある場合は金額を告げなければならない。 ※規約が案の段階でも、その案についても説明が必要。 |
7 | 区分所有者が負担する通常の管理費用の額 ・通常の管理費。滞納がある場合は金額を告げなければならない。 |
8 | 一棟の建物および敷地の管理が委託されているときは、その委託先の氏名や住所等 マンション管理の適正化の推進に関する法律第44条の登録を受けているときは登録番号も記載 ・法人の場合、商号または名称、主たる事務所の所在地。ただし管理業務内容は不要。 ◎区分所有建物の貸借と共通◎ |
9 | 一棟の建物の維持修繕の実施状況が記録されているときはその内容 |
「規約の定めがあるときは」という文章には、必ず「規約が案の段階でも、その案についても説明が必要」というのがセットで付いてくる。
現時点での規約と、現時点で出されている案があれば、両方とも説明しなければいけない。
逆に規約の定めや案がないのであれば説明をしなくても良い。
宅地・建物の貸借
建物には一軒家のような戸建ても、マンション、アパートも含まれる。
貸借の場合は、宅地のみ説明、建物のみ説明という場合がある。
宅地 | 建物 | 記載事項 | |
1 | ◯ | ◯ | 登記された権利 |
2 | ◯ | ◯ | 法令に基づく制限 ・建物の賃貸借の場合、一定の制限のみ説明。 建ぺい率、容積率等に関する制限は関係ないので説明不要 ※土地の賃貸借では説明必要。 |
3 | ◯ | ✕ | 私道負担に関する事項 ・建物を借りる人にとっては、私道については関係ない。 |
4 | ◯ | ◯ | 飲用水、電気、ガス等の供給施設、排水施設の整備状況 |
5 | ◯ | ◯ | 未完成物件の工事完了時の形状、構造 |
6 | ◯ | ◯ | 土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域、造成宅地防災区域に関する事項 |
7 | ◯ | ◯ | 水害ハザードマップにおける取引対象物件の所在地 |
8 | ✕ | ◯ | 建物の石綿の使用の有無の調査結果の記録に関する事項 |
9 | ✕ | ◯ | 建物の耐震診断に関する事項 |
10 | ✕ | ◯ | 既存の建物であるときは、建物状況調査(インスペクション)等に関する事項 |
11 | ◯ | ◯ | 借賃以外に授受される金銭の額、および目的 ・敷金など |
12 | ◯ | ◯ | 契約の解除に関する事項 |
13 | ◯ | ◯ | 損害賠償額の予定または違約金に関する事項 |
14 | ◯ | ◯ | 支払い金、預り金を受領する場合の保全措置の有無、概要 |
15 | ✕ | ◯ | 台所・浴室・便所等の整備状況 ※事業用建物の貸借でも説明必要。 |
16 | ◯ | ◯ | 契約期間および契約更新に関する事項 ・更新の際の賃料改定に関することや、期限付き建物賃貸借の場合は 契約の更新はない等説明。 |
17 | ◯ | ◯ | 定期借地権、定期借家権(定期建物賃貸借)などに関する事項 ・期間が満了すれば契約は終了=更新はないことを説明。 |
18 | ◯ | ◯ | 宅地建物の用途や利用の制限 |
19 | ◯ | ◯ | 金銭の契約終了時の精算に関する事項 ・敷金の用途等を明確にする。金額が明確でない場合はその旨を説明する。 ※保管方法は説明不要。 |
20 | ◯ | ◯ | 宅地建物の管理の委託を受けた者の氏名、住所等 賃貸住宅管理業者登録規定による登録を受けているときは登録番号も記載 |
21 | ◯ | ✕ | 契約終了時における宅地上の建物の取壊しに関する事項の内容 ・借地上の建物取り壊しのことなので、建物を借りる場合は該当しない。 |
22 | ✕ | ◯ | 高齢者の居住の安定確保に関する法律に規定する終身建物賃貸借をしようとするときはその旨 |
区分所有建物の貸借の追加記載事項
区分所有建物売買交換共通
3 | 専有部分の用途、その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときはその内容 ・専有部分の使い方に関する制限。 ペット飼育や店舗営業などについて規約の定めがあるなら説明をする。 ※規約が案の段階でも、その案についても説明が必要。 ◎区分所有建物の貸借と共通◎ |
8 | 一棟の建物および敷地の管理が委託されているときは、その委託先の氏名や住所等 マンション管理の適正化の推進に関する法律第44条の登録を受けているときは登録番号も記載 ・法人の場合、商号または名称、主たる事務所の所在地。ただし管理業務内容は不要。 ◎区分所有建物の貸借と共通◎ |
IT重説
宅地建物の35条書面に基づく重要事項説明を、テレビ会議等ITを活用して行う。
貸借・売買・交換で使用できる。
宅建士により記名された重要事項説明書及び添付資料をあらかじめ送付しておくこと。
※電磁的方法による提供を含む
重要事項の説明を受けようとするものが、重要事項説明書および添付資料を確認しながら、説明を受けることができる状態であること。並びに映像及び音声の状況について、宅建士が説明を始める前に確認すること。双方が十分に聞き取れ、双方向でやり取りできる環境であること。
説明開始後、映像を視聴できない、音声が聞こえないなどトラブルが生じた場合は、直ちに説明を中断し、状況が改善された後に説明を再開すること。
宅建士は宅建士証を提示し、説明を受けるものが画面上で確認できたことを確認すること。
問題に挑戦!
宅地建物取引業者が行う宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明に関する次の記述のうち、同法の規定に少なくとも説明しなければならない事項として掲げられていないものはどれか。
1.建物の貸借の媒介を行う場合における、「都市計画法第29条第1項の規定に基づく制限」。
2.建物の貸借の媒介を行う場合における、「当該建物について、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容」。
3.建物の貸借の媒介を行う場合における、「台所、浴室、便所その他の当該建物の設備の整備の状況」。
4.宅地の貸借の媒介を行う場合における、「敷金その他いかなる名義をもって授受されるかを問わず、契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項」。
答えの詳しい解説は「あこ課長の宅建講座 35条書面2」を御覧ください。
YouTube:あこ課長の宅建講座も併せてご覧ください。
ブログと連動していますので、さらに理解力がUPしますよ。