この単元は、言葉が抽象的で難解に見えるため苦手意識を持つ受験生が多いですが、本試験での出題パターンは「4つの価格の定義の入れ替え」と「3つの評価手法の特徴のひっかけ」にほぼ限定されている、実は対策しやすい単元です。
ここで確実に押さえるべき最重要ポイントは2つあります。
1つ目は、「特定価格」は市場性がある不動産について法令等の社会的要請を背景に求める価格(民事再生法等)であるのに対し、「特殊価格」はそもそも市場性を有しない不動産(文化財等)について求める価格であるという明確な区別です。
2つ目は、「収益還元法」は賃貸用不動産だけでなく、マイホームなどの自用不動産であっても“賃貸を想定すること”で適用できること、そして「原価法」は建物や造成地には使えますが“既成市街地の土地”には一般に適用困難であることです。
難しい数式を覚える必要は一切ありませんので、「どの手法がどの不動産に使えるのか(使えないのか)」をキーワードでスッキリ整理していきましょう。
あこ課長地価公示法とどちらかが出題されます
不動産鑑定評価基準
不動産の鑑定評価とは、不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示すること。
不動産鑑定評価基準とは、不動産の鑑定評価を行うための全国共通のルール。
価格形成要因とは、不動産の効用、相対的稀少性、有効需要に影響を与える要因のことで、一般的要因、地域要因、個別的要因がある。
| 一般的要因 | 一般経済社会における不動産のあり方およびその価格の水準に影響を与えるもので、自然的要因、社会的要因、経済的要因、および行政的要因の4つに大別される |
| 地域要因 | 規模、機能等にわたる各地域の特性を形成し、その地域に属する不動産の価格の形成に全般的な影響を与えるもので、宅地地域、農地地域等により特有の要因がある |
| 個別的要因 | 不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因で、土地、建物、建物及びその敷地の区分に応じた要因がある |
不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用を前提として把握される価格を標準として形成されるが、これを最有効使用の原則という。
未竣工建物等鑑定評価とは、造成工事が完了していない土地や、建築工事が完了していない建物について、工事の完了を前提として行う鑑定評価をいう。
不動産の鑑定評価で求める価格
①正常価格(原則)
市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で、合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格。


売り手と買い手に特別な事情がない状態で双方が納得した不動産を売買する取引価格。
②限定価格
市場性を有する不動産について、不動産と取得するほかの不動産との併合などに基づき、正常価格と同一の市場概念の下において、形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価格を適正に表示する価格。


隣接地を購入することにより、価格の上昇を踏まえた価格。
売買当事者が限定される価格。
③特定価格
市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的のもとで、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより、正常価格と同一の市場概念のもとにおいて、形成されるであろう市場価格と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格。


「民事再生法」に基づいて、今すぐ法人が所有する不動産を売却(早期売却)とした場合を想定した価格。
「資産の流動化に関する法律」に基づいて投資家に示すための不動産の価格。
④特殊価格
市場性を有しない不動産について、利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格。


重要文化財の指定を受けたお寺など、その保存を目的として評価を行う場合の価格。
不動産鑑定評価方式
複数の手法
| 原価方式 | 比較方式 | 収益方式 | |
| 着眼点 | どれだけの費用が投じられたか? →不動産の再調達に要する原価 | どれだけの価格で取引されているか? →不動産の取引事例、賃貸借等の事例 | どれだけの収益を得られるか? →不動産から生み出される収益 |
| 価格 | 原価法(積算価格) | 取引事例比較法 (比準価格) | 収益還元法 (収益価格) |
原則として、この3つの方式から、対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の手法を適用すべきとされている。
原価法
価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、これについて減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める。
減価修正の方法として、耐用年数に基づく方法と観察減価法があり、原則として、この2つを併用する。
対象不動産が「建物」または「建物およびその敷地」である場合は、再調達価格を容易に把握できるため有効。
対象物が「土地」のみの場合は、再調達原価を求めることが容易な造成地、埋立地などの時に有効だが、既成市街地の土地は再調達原価を算定するのが難しいため、一般に原価法は適用しない。
「土地」についての原価法の適用において、宅地造成直後と、価格時点とを比べて、公共施設や利便施設等の整備などによる環境の変化が価格水準に影響を与えていると認められる場合には、地域要因の変化の程度に応じた増加額を熟成度として加算できる。


今すでに建っている建物を取り壊したと仮定して、同じ建物をもう一度建てたときの費用→再調達原価:3000万円。
建物や設備が老朽化した分の価格(耐用年数)→減価修正:750万円。


再調達原価を求めることが容易な造成地、埋立地には使える。
既成市街地の土地は再調達原価を算定するのが難しいので一般に原価法は適用しない。
近くにスーパーなどができると住宅との価値があがるので、それを価格に反映できる。
取引事例比較法
★多数の取引事例を収集し、適切な事例の選択を行い、それに事情補正(特殊事項を考慮して適切に補正)及び時点修正(取引事例の価格を価格時点の価格に修正)を行い、かつ、地域要因の比較および個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量して、対象不動産の試算価格を求める。
★取引事例は原則として、近隣地域または同一需給圏内の類似地域に存在する不動産から選択し、必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺地域に存する不動産から選択する。
★取引事例は正常なものと認められるものであること、または正常なものに補正できるものであること。ただし、投機的取引事例は含まない。
★時点修正をすることが可能なものであること。
★地域要因および個別的要因の比較が可能なものであること。
※★は取引事例比較法における取引事例のみでなく、原価法における建設事例や、収益還元法における収益事例にも当てはまる。
農地地域にある建物やその敷地など、不動産の取引が極めて乏しい地域における不動産や、神社・寺院・学校など、取引が極めて少ない不動産については適用が困難。


取引事例は原則として、近隣地域または同一需給圏内の類似地域に存在する不動産から選択し、 必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺地域に存する不動産から選択する。
多数の取引事例に事情補正及び時点修正を加えて算出。
投機的取引事例は含まない。
取引のほとんどない地域や、取引が極めて少ない不動産には適用困難。
収益還元法
対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより、対象不動産の試算価格を求める。
収益価格を求める方法には、一定期間の純収益をベースに算定する「直接還元法」と、連続する複数の期間に発生する純収益などを合計して算出する「DCF法」がある。
重要文化財の指定を受けた建物等の、一般的に市場性を有しない不動産以外のものには、基本的にすべて適用すべきとされている。
賃貸用不動産のほか、一般企業用などの賃貸以外の事業の用に供する不動産に対しても、特に有効だが、マイホーム用地等の自用の不動産の価格を求める場合にも、賃貸を想定することによって適用できる。
市場における不動産の取引価格の上昇が著しいときは、先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段として活用されるべきとされている。


対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在の価値の総和を求めることにより、対象不動産の試算価格を求める。
賃貸用不動産のほか、マイホーム用地等の自用の不動産の価格を求める場合にも、賃貸を想定することによって適用できる。


重要文化財などの市場性を有しない不動産には使えない。
問題に挑戦!
不動産の鑑定評価に関する次の記述は、不動産鑑定評価基準によれば、マルかバツか。
1.価格形成要因のうち個別的要因とは、一般経済社会における不動産のあり方及びその価格の水準に影響を与える要因をいい、自然的要因、社会的要因、経済的要因及び行政的要因に大別される。
2.収益還元法は、賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める場合に特に有効な手段であり、自用の不動産であっても賃貸を想定することにより適用される。
3.原価法における減価修正の方法としては、耐用年数に基づく方法と、観察減価法の2つの方法があり、これらは併用するものとする。
4.対象建築物に関する工事が完了していない場合でも、当該工事の完了を前提として鑑定評価を行うことがある。
問題の解説は「あこ課長の宅建講座 不動産鑑定評価基準」を御覧ください。



YouTube:あこ課長の宅建講座も併せてご覧ください。
ブログと連動していますので、さらに理解力がUPしますよ。








