この単元は 宅建試験の権利関係において、受験生を悩ませる単元の1つです。
学習量が多く用語も難しいため、最初は抵抗を感じるかもしれません。
しかし、基本となる 誰が誰に対して何を言えるのか という相関図を自分で描けるようになれば、パズルを解くように正解を導き出せるようになります。
特に物上代位の差し押さえ時期や、抵当権消滅請求の2か月という数字、建物賃借人の6か月の猶予といった具体的なルールは、ひっかけ問題の定番です。
一度で全てを暗記しようとせず、図解を繰り返しながら、まずは抵当権という権利の強さとその限界をイメージすることから始めてみてください。ここを乗り越えれば、得点源として大きな武器になります。
あこ課長ボリュームがありますので、2回に分けて投稿してます。
抵当権とは
債権の回収を確実にすることを目的とした権利(=担保物権)。
債務者が債務の弁済ができないとき、債権者は競売代金などから、他の債権者に優先して債権の回収をすることができる。
抵当権の目的物となるものは、不動産、地上権、永小作権がある。
抵当権の設定契約は諾成契約であり、抵当権者と抵当権設定者の合意で行われる。
第三者に対抗するには登記が必要。


抵当権でよくある相関図


物上保証人


使用収益・処分
抵当権が設定されても、抵当権実行までは抵当権設定者は使用することができる。また、人に貸して賃料を受け取るなど、収益を得ることもできる。
抵当不動産の処分は、抵当権者の承諾を得なくてもできる。
抵当権設定者が通常の利用方法を逸脱して、目的物を損傷するような場合、抵当権者は妨害排除請求をすることができる。


抵当権の性質
付従性
抵当権は被担保債権が存在してはじめて成立する。
被担保債権が消滅(弁済や時効など)すれば、それに従って抵当権も消滅。
※債務の弁済と抵当権登記の抹消は同時履行の関係ではない。(債務の弁済が先)
随伴性
抵当権は被担保債権が移転すればそれと一緒に担保物権も移転する。


不可分性
被担保債権の全額が弁済されるまで、抵当不動産の全部について効力を及ぼす。
物上代位性
抵当権者は目的物である抵当不動産が滅失等してしまった場合に、抵当権設定者が受け取るべき金銭等について物上代位できる。
例)抵当権の目的物である家が火事で焼失した場合、火災保険金請求権や損害賠償請求権に対し抵当権の効力を主張できる。
→保険金等を差押えて、債権を回収することができる。
ただし、抵当権者が物上代位するには、抵当権設定者がその保険金等を受領する前に差押えする必要がある。
抵当権の効力
| 対象 | 効力 |
| 土地・建物 | 土地だけに設定した抵当権の効力は建物に及ばない 建物だけに設定した抵当権の効力は土地に及ばない |
| 付加一体物 | 増築部分や雨戸など、抵当不動産とそれに付加して一体となった物には、付加されたのが抵当権の設定の前後を問わず、原則として効力が及ぶ |
| 従物 従たる権利 | 土地上に設置されている動かすことができる庭石や石灯篭など、抵当権設定当時に存在した従物については、当事者はそれも抵当権の対象であると考えているので、原則として効力が及ぶ しかし、抵当権設定後の従物には効力は及ばない また、土地を借りてその土地の上に建物を建てていた場合、建物に抵当権が設定されれば、設定当時からあった賃借権などの土地利用権に対しても効力が及ぶ |
| 抵当不動産の果実 | ・天然果実・法定果実 原則、果実には効力が及ばないが、被担保債権に不履行があった場合、不履行後に生じた抵当不動産の果実にも効力が及ぶ。法定果実は物上代位によっても、抵当権の効力を及ぼすことができる。 |
第三取得者
第三取得者とは
抵当権が設定された不動産を取得した人=抵当不動産の第三取得者。


第三取得者を保護するための手段
| 第三者弁済 | 第三取得者が債務者の借金を全額弁済すれば抵当権は消滅する。 債務者の意思に関係なく、第三取得者は弁済することができる。 |
| 代価弁済 ※抵当権者主導 | 第三取得者が抵当権者の請求に応じて、抵当権者に代価を支払うことにより抵当権が消滅する。 債務者の同意、承諾は不要。 |
| 自ら競落 | 抵当権が実行されても、第三取得者自ら競落して所有権を確保する。 |
| 抵当権消滅請求 ※第三取得者主導 | 第三取得者は登記をしている各抵当権者に対し書面を送付する。抵当権者が抵当権を実行する時は2か月以内に債務者および抵当不動産の譲渡人に通知しなければならない。書面を受けた抵当権者は2か月以内に抵当権を実行しないときは、書面に記載した代価または金額を承諾したものとみなされる。 すべての抵当権者がそれを承諾し、第三取得者が登記したすべての抵当権者の承諾を得た金額を支払えば、抵当権は消滅する。 抵当権実行としての競売による差押えの効力発生前に行うことが必要。 債務者や保証人は抵当権消滅請求をすることができない。 |
抵当権消滅請求
抵当権が設定され、登記もされている不動産を、抵当権設定者と売買契約を結んだ買主(第三取得者)は、抵当権の登記が契約の内容に適合しないものであれば、抵当権消滅請求の手続きが終わるまで代金の支払いを拒絶できる。
抵当権消滅請求により、抵当権者にお金を支払って抵当権を消滅させた場合、抵当権設定者に支払った金額相当分を償還請求できる。


第三者の賃貸借
抵当権が設定されている不動産を借りている場合。




土地と建物共通のルール
抵当権設定登記後に設定された賃借権は、原則として抵当権者および競売による買受人に対抗できない。
抵当権設定登記前の賃借権
対抗要件を備えていれば、賃借権を抵当権者等に対抗することができる。
抵当権設定登記後の賃借権
原則:対抗要件を備えていたとしても、賃借権を抵当権者に対抗することができない。
例外:登記した賃借権であり、賃借権の登記前に登記したすべての抵当権者が同意し、かつ、その同意の登記がある場合には、賃借権を対抗できる。ただし、抵当権者の同意によって不利益を受ける者がいる場合は承諾が必要。
建物のみのルール
抵当権の登記後に賃借した者で、競売手続きの開始前から建物を使用、収益する者等は、原則、その建物が競売にかけられた場合、買受人が買い受けたときから6ヵ月を経過するまではその建物を買受人に引き渡さなくても差し支えない。


問題に挑戦!
民法第379条は、「抵当不動産の第三取得者は、第383条の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。」と定めている。これに関する次の記述は、民法の規定によれば、マルかバツか。
1.抵当権の被担保債権につき保証人となっている者は、抵当不動産を買い受けて第三取得者になれば、抵当権消滅請求をすることができる。
2.抵当不動産の第三取得者は、当該抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生した後でも、売却の許可の決定が確定するまでは、抵当権消滅請求をすることができる。
3.抵当不動産の第三取得者が抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に民法第383条所定の書面を送付すれば足り、その送付書面につき事前に裁判所の許可を受ける必要はない。
4.抵当不動産の第三取得者から抵当権消滅請求にかかる民法第383条所定の書面の送付を受けた抵当権者が、同書面の送付を受けた後2か月以内に、承諾できない旨を確定日付のある書面にて第三取得者に通知すれば、同請求に基づく抵当権消滅の効果は生じない。
問題の解説は「あこ課長の宅建講座 抵当権1」を御覧ください。



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ブログと連動していますので、さらに理解力がUPしますよ。








